「自炊粗食記録」おぼえがき
ぼくが自炊を続ける理由は、
料理が趣味だからでも、マメだからでもなく、 外で食べると食費が嵩んでしまうのが疎ましいのと、 手間のかからぬ料理をテキトーに作って、 自分の好きな味付けで食べるのが好きだからです。 1994年4月に始まった独り暮らしの、 最初の日に食べたものを覚えています。 従兄弟から貰った炊飯器で米を炊き、 近所のスーパーで買った茶碗にご飯を盛り、 卵と醤油をぶち込んでぐりぐりとかき混ぜました。 引っ越して来たばかりでよそよそしい、 段ボールと埃の匂いの立ちこめる部屋で頬張った、 あの卵かけご飯はほんとに旨かった。 その食事をきっかけに、 ぼくの時間が始まったのを感じました。 2009年現在、 どういうわけかぼくはまだ、 ずっと同じ部屋に住み続けていて、 そして今でもやっぱり卵かけご飯が旨い。 これはよくよく考えれば不思議なことです。 絶えず時間は流れているはずなのに、 ぼくの身の回りではいろんなことが停まっている。 ずっと同じものばかり食べているせいでしょうか…。 安価で馴染みの食材ばかりを買っているため、 限りある順列組み合わせの範囲内の レパートリーしかないのですが、 ふとある時、自分の手抜き料理には どれほどのバリエーションがあるのかを 知りたいと思ったのが、この記録の発端です。 また、偶然面白い食材の組み合わせが発生し、 「これは使える、ぜひまたやってみよう」と思っても、 たいていすぐに忘れてしまうので、 即興料理の再現方法をあとで思い出すための ヒントを残す意図もあります。 なお、今の住まいは、 まともな料理をしたい人にとっては 非常に不自由な空間のようで、 遊びに来た人はしばしば呆れるか怒り出します。 狭い台所に小さな電熱器が一つあるきりなので、 強い火力を要する料理は不可能です。 複数の料理を同時に作ることが出来ないので、 具沢山一品完結が基本方針です。 ついでに、電子レンジ・オーブントースターがなく、 魚焼きグリルがなく、冷凍室がありません。 でも、ぼく自身は別に不自由は感じていないので 今後もテキトーに自炊を続けようと思っています。 なお、愛用の食器の中には、 友人からもらったり買ったりしたものがいくつもあります。 お気に入りの器は、粗末な手抜き料理の味を引き立たせ、 食事を楽しみにしてくれるものばかりです。
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