あいさつ


今日の落描きや、昨日の走り書きなら
そこらへんに転がっているのでたやすく見付かります。
しかし先週のスケッチ、先月の覚え書きともなると
そもそもその存在を忘れかけており、
そこらを見回してもすぐには発見できません。
いつの間にか部屋の隅や、引き出しの中などに紛れ、
古い紙くずと混ざり合って行方不明になるのです。





そこで堆積物を掻き回して捜し物を始めると、
出て来るのは半年前のメモ帳、去年のノート、
5年前のスケッチブックなどです。
こうして描きかけて止めていた絵や
出来損ないの物語と久しく再会するのですが、
時間を置いて見直してみると、
行き詰まっていたはずの作業も
他人事みたいな距離感があって面白い。
で、物足りなくなってそれらに手を入れたてみたり、
さらに何枚も続きを描いてみたり、
いつしか飽きて、また放ったらかしにしてみたり…。





10数年間というもの、そんなことの繰り返しでした。
出来たものは発表のあてもなく、
ごく少数の人にこっそりと見せるだけ。
『作品』の完成するペースはとてつもなくゆっくりで、
どうしようもなく回りくどくて、もどかしくて、
だけどぼくはちっとも飽きることがなかったのです。





2000年5月、
Apple社のPowerBookG3を手に入れました。
これはぼくにとって全く新しい体験でした。
使い込むにつれて、まるで自分の脳味噌を
外側から眺めているかのような気がしてきます。
無駄に脳随を走り回っていた空想の電気信号が
文字列やビットマップデータやサウンドに変換され、
五感で扱える素材として分類・蓄積されていく。
大袈裟かもしれませんがそんなふうに感じました。





『アイデアを引き出しの中で
寝かせてばかりいては埒が開かない、
パソコンを使って濃密かつ緻密に製作しよう』
という気持ちが、このコンテンツを作る動機です。
とは言っても、ぼくはやっぱり不器用なので、
アナログ一辺倒よりももっと無駄で
なおかつ非効率的なことをしているのかもしれません。





インターネットは公共の場所でもあります。
ここにアップロードされている風景が
他者の目にも面白いものとして映るのかどうかは
はなはだ疑問ではありますが、
ページ作りが独りよがりに傾き過ぎぬよう
一通りの心がけは欠かさぬよう努めます。
もし楽しんでくれる方がいれば、幸いです





2004年9月


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